4832 JFEシステムズ
JFEホールディングスの子会社(厳密には孫会社)。
親会社が66%以上の株を保有しています。
時価総額365億円。
自己資本比率は58.7%、但し「借入金」は0(ゼロ)。無借金経営。
にも拘わらずROEは16%。優良会社です。
順調に売り上げ利益ともに伸ばしています。
足下の配当利回りは3.64%程度。
でもPERは9倍台です。なんか安すぎます。でもそれには理由があります。
直近の決算短信を見ると、流動資産の中に「預け金」という項目があります。
約140億円となっています。
この預け金、表記は預け金になっていますが、実態はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム※)です。
(※)「定時株主総会招集ご通知ホームページ掲載事項」にさらっと記載されています。
借入金がありませんので、140億円の預け金の源泉は株主資本の一部である利益剰余金です。
短い期間の預け金を複数、重層的かつローリング(繰り返し)することによって、表面上は「流動資産」になっていますが、実質的には利益の親会社への還元となっていることが見て取れます。年々増えていましたが、直近は一定になっているようです。
会社は、中期経営計画で150億円の資金が必要であると謳っています。中身を見ると必要とされる資金の内訳が書かれています。が、資本的な支出と経常的な支出(人件費および人材開発費等)をごっちゃにし、本当に必要な資金が分からないようにしてあります。
ご丁寧に150億円は今後3年間の経常利益合算と同等と書かれています。でも上述の人件費や人材開発費は経常利益算出のコストとして既に織り込み済みです。
賢い会社です。
今年の総会では、事前質問状を送付してWACCの数値を問いただしました。
大木社長は、「株主資本コストは6%程度と認識していること。借入金がないのでWACC(加重平均資本コスト)も同等の6%であると認識している。」と明言されました。
念のため株主総会議事録閲覧・謄写請求権を使用し「議事録」を手に入れましたが同様のことが書かれています。
これは、事業をするうえで調達している資本のコストが6%であるということを意味します。
コーポレートガバナンスコードの付属文書である「投資家と企業の対話ガイドラン」には資本コストを意識した経営をすることが謳われています。WACCを下げるためにも適正レベルで他人資本を活用すべきです。
また、先の「預け金」ですが、流動資産に位置付けられていますので常識的に考えてみれば利回りは1%程度となります。
資本を6%で調達しそれを1%で運用する。しかも、その運用先は親会社です。利益剰余金は株主の共有資産です。でも一部株主しか利用できない構図になっています。
これに伴い、実質的なROEも親会社とその他株主との間に差が生まれます。
ROEは次の式で求まります、即ち、
税引き後当期純利益 / 株主資本(資本金+資本剰余金+利益剰余金)=ROE
全株主同じにならなければならない筈なのに、親会社だけは分母の株主資本(利益剰余金部分)が実質的に少なくなっています。
コーポレートガバナンスコードの基本原則1には「株主の実質的平等性確保」が謳われています。JFEシステムズでは明らかに「不平等」です。
ROE16%もあるから良いではないか。伊藤レポートではROE8%と書かれているではないか。と思われるかもしれません。でも伊藤レポートには「それはあくまでも「最低限」であり、8%を上回ったら、また上回っている企業は、より高い水準を目指すべきである。」と書かれていることを付言しておきます。
因みに同業の
2327 日鉄ソリューションも親会社へ巨額の預け金をしていて、株主提案を受けました。ところが、直近の四半期決算をみたら、IFRSになって預け金が見えなくなっていました。JFEシステムズも同様の形になるかもしれません。